Father’s Day 〜カオルのアトリエ番外編〜
最近、俺の教え子のカオルとリョーマの様子がおかしい。
工房の隅でこそこそしているし、俺が来たら慌てたように隠そうとするし、いったいどうしたんだろう。俺は何かしてしまったんだろうか?まったく分からない・・・
もしかして嫌われてしまったんだろうか・・
あの2人に嫌われるのは嫌だ・・・特にカオルには・・・
それから数日たったある日、俺は、『金の麦亭』でこの国の王室騎士副隊長、クニミツ・テヅカと食事をとっていた。
「と、言うわけなんだよ。どういうことだと思う?」
俺が、城に何度も出入りしているうちに、すっかり意気投合したこいつに、相談する。
「うむ・・まあ自分の弟子に嫌われているとなると落ち込むのは分かるが・・ちゃんと聞いてみたのか?」
「ああ・・聞いたよ。でも先生には関係ないって言うし・・」
「この前会ったときには別に変わったところはなかったみたいだがな。
何かお前に隠してやりたいことでもあるのではないか?」
「何かって何だよ」
「俺が知るか。まあ別にお前は嫌われてはいないと思うぞ。むしろ尊敬されていると思う。そんなに気にするな」
「ああ・・そう願いたいもんだね」
「俺は仕事が残っているからもう行かねばならん。また時間があったら、ゆっくり飲もう」
「ああ。仕事を頑張るのはいいが体を壊すなよ」
「分かってる。お前もな」
そういってやつは酒場を出て行った。俺はもう少しここにいようか。どうせ帰ってもしょうがないからな。そう思った俺は、しばらく時間を潰すことにした。
そろそろ日も落ちてきたな・・・帰るとするか・・
『金の麦亭』をでた俺はまっすぐ自分たちの工房へ向かう。
そして工房の前に着き、扉を開けると、いきなりクラッカーを鳴らされ、ものすごく驚いてしまった。
「なっなっ何なんだ!いきなり!」
「サダハル先生。びっくりしたっすか?」
「カオルさん。うまくいったっすね。サダハル先生がこんなに驚くなんて」
俺の可愛い教え子、カオルとリョーマはしてやったりという顔で笑うと、俺の手を取り、テーブルへと連れて行った。
「すごいご馳走だな。今日はどうしたんだい?」
目の前には普段あまり食べないご馳走が並んでいた。しかも俺の好物ばかりだ。
「サダハル先生。今日は、遠い東の国では、自分たちの父親に感謝をする日っす」
「そうっす。だから俺とカオルさんで先生を驚かそうと思って、一生懸命用意したんです。先生は俺たちにとって親同然っすから」
そうだったのか・・・俺はすごく恥ずかしい・・・2人に嫌われてたと思ってたなんて。でも良かった。
なんかすごく嬉しい・・・
「ご飯すごく美味しかったよ。ありがとう。2人とも」
ご馳走をたらふく食べたあと、すっかり満足した俺は、食後のお茶を飲みながら2人に礼をいった。
すると2人は、顔を見合わせると、
「先生、こっちも受け取ってください。」
と、アクセサリーを差し出す。これは、宝石の王者、コメートの指輪と魔法防御力があがるゼ−レネックレス。しかもすごく出来がいい。
「これはもしかしてお前たちが作ったのか?」
「そうっすよ。俺たちだって錬金術士の端くれっすから。」
「すごく時間かかったすけど・・これが先生を護ってくれますようにって」
すごく嬉しいのに言葉にならない・・ありがとう・・本当にありがとう。
気がつくと俺は自分が涙を流してるのに気づいた。
「先生?」
2人の心配そうな声に我に返る。
「ごめん・・・2人とも・・・嬉し涙って本当にあるんだな。俺、今死ぬほど嬉しいよ。ありがとう・・」
俺の言葉に2人とも笑う。俺はそんな2人を抱きしめていた。
H16・6・25
この小説本当は父の日に書くつもりだったのに5日もたってしまった(汗)
一応UPしときます。しかしサダハル先生18のみそらでお父さんですか・・・
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