100%天然素材




青春学園高等部のテニス部には、それはそれは可愛い生き物が生息している。
「おい、あれ・・・・何やってんだ・・・・?」
2年生の乾貞治は、隣で休憩している1年の桃城武を肘で突付いた。
「へ・・・?薫のことっすか」


二人は、一人で黙々と何やら細かい手先の作業をしている、1年生の海堂薫をじい〜〜っと凝視した。
何やってるんだ??
なんか作ってる風だが・・・・


こねこね。
きゅっきゅっ。
ぺと。
海堂は一心不乱に自分の指先を見詰めている。


「おお?なんかできたみたいだぞ」
海堂は、言葉では表現できないくらいに満足げな顔をしている。
いや普段の無表情と、さして変わりはないのだが、乾と桃城の二人は、「海堂薫大好き期間」が
非常に長いので、ものすごーーーく微妙な表情の違いも、ちゃんと見て取れるのである。


海堂が作っていたものは、なんと、ペットボトルのキャップのカバーだった。
「おおっ!?」
海堂のスポーツ飲料の蓋には、今完成したばかりの、かわいらしい猫ちゃんがくっついている。
「あいつあんなの作ってたんだ。あの材料ってどうしたのかな」
「そりゃあ家から揃えて持ってきてたんでしょ。紙粘土かな・・・それにしちゃあ色が鮮やかだな」
「アクリル樹脂みたいなもんじゃないか」
「なるほどねえ」


海堂は猫をすごく嬉しそうに見ながら、ペットボトルの蓋を開けて、スポーツ飲料をぐいと飲んだ。
そしてまた蓋をし、猫を見る。


ほわぁぁぁぁぁん・・・・・


乾と桃城は、そんな海堂をうっとりしながら見ていた。
そしてそんな二人を遠くから見て呆れている、これまた2年の不二周助がいた。
「はぁー、またあの二人は・・・・」
と、溜め息をついてはいるが、実はそんな二人と海堂を観察するのが大好きなのである。
趣味と言ってももはや過言ではない。
不二は海堂の傍へとことこと歩み寄ると、
「やぁ海堂」
と声をかけた。
「何作ってたの」
「え、あ、コレっす・・・」
海堂は頬をちょっぴり赤くしながら、さっき完成した猫を不二に見せた。
「へえ〜、大したもんだね、海堂やっぱり器用だよ。越前のうちにいる猫によく似てる」
「あ、その、実はその猫がモデルで・・・・」
「あはは、そうかそうか」


不二が羨ましい!!
乾と桃城はウルウルしながら二人の様子を見守っていた。
不二には海堂も話し易いのかな、俺にはあんな風に喋ってくれたことないぞ。
と、乾は思う。桃もやっぱり、
ちぇー、不二先輩には素直でやんの。
とスネていた。


「あ、そうそう、ゆうべの『ミュージックポート』に、ジャズシンガーの金子晴美が出てたよね、
海堂見た?確か海堂のお父さんてジャズフリークでしょ」
「あ、ハイ、見たっす。親父喜んでたっす」


不二は海堂の隣に腰を下ろして、本格的に話し始めた。
乾も桃も羨ましくて歯軋りしている。
お、親父さんの趣味まで知っているのか・・・・
俺だって薫んちの親父がジャズ好きってことぐらい知ってるぞ・・・・


すると海堂が、またまたボケなことを言って、不二と、周りにいた先輩たちを唖然とさせたのだ。
「あっ、不二先輩、ゆうべ俺、すげー発見したっす!なんかね、BS放送で今年の上半期のベストヒット
ての見てたら、『アンG』っていう歌手の人、スマップの稲垣って人とそっくり、瓜二つなんです!!
兄弟か、もしかすっと同一人物かも知んねえッスよ!」


「・・・・あれ・・・・??みんなどうしたんスか・・・・?」
あまりにみんながぽっかーーーーんとしているので、海堂は不安になって回りをキョロキョロした。
すかさず3年生たちが、だーーーーっと海堂に群がってきて、
「よしよし海堂、お前は可愛い子だな」
「そうだよな、きっと同一人物だよ!お前って鋭いよな」
と口々に言いながら、海堂をよってたかって抱き締めた。
「また今頃になって、もう廃れたような話題を出す辺りが、ズレてて可愛いんだよ」
なんのことかわからない海堂は、頭の上にはてなマークをいっぱい飛ばしながら、上級生たちに
もみくちゃにされていた。


「も、桃ぉ〜〜〜〜、かっ可愛いなあ〜〜〜〜」
「可愛いっすよ乾先輩〜〜〜〜〜」
この二人は相変わらずウルウルしながら手を取り合っている。







その数日後。
「かあ〜〜、英単語ってなぁ、なんでこう覚えづらいのかねえ!!なんか面白れー暗記の仕方って
ねーのかよもう!」
と、桃城が練習終了後の部室で頭を掻き毟っていた。
「にゃんだよ桃は〜、何カッカきてんのぉ」
「明日単語の試験あるんスよ!合格しなきゃあ居残りだから、部活来れなくなっちまうっす!」
「そりゃ大変。何としてでも合格しろぉ〜〜」
すると横から海堂が、桃城の持っているテキストをさっと取り上げて、
「どんな単語覚えてんだよ」
と覗き見た。
「・・・・"cannnot afford"・・・『〜する余裕がない』・・・・」
と呟いたあと、桃城の顔をじっと見て、ぽつっと言った。
「アフォード(アホほど)余裕がない・・・・」


「ぶっ」
菊丸に続いて、部員全員が吹き出した。
「あははははは!!うまいうまい!!」
「桃、アホほど余裕がねえぞーー!!」
「どっこがうまいんスかーーーー!!みんなしてよってたかって薫のこと甘やかしちゃってもう!!」
「いいんだ海堂は!!何言ったって可愛いんだ!!」
「ひっでえーーーー!!」
「ほらほら海堂、次の"insult"はどう覚える?」
「う〜〜〜ん・・・・」
小首を傾げる仕草がまたまた可愛い!!
先輩たちは海堂に惚れ込むあまりに、みんなどっかネジが飛んでしまっている。
「うーんと・・・部猿と言って『侮辱する』・・・・?」
ほ、ホリオ・・・・?
なぜかその場にいた1,2年生たちは、中等部の後輩、堀尾の顔を思い浮かべた。
しかし皆、即座に気を取り直して、海堂を誉めそやした。
「おおおーーー!!うまい!!」
「海堂じょうずじょうず!!偉いぞーーー!!」
みんなでわいわいと、海堂の持つテキストを覗き込んで大騒ぎとなった。
「んもーーーばっかばかしい!!駄洒落にもなってねえぞ!」
「んな事言って、桃、"afford""insult"は、もう覚えただろ!」
「う・・・・確かに・・・・」
特に猿の方は、堀尾の顔と共にばっちり頭に浮かぶ。
「そら見ろ!海堂は偉いぞ」





まあそんなこんなで、青学テニス部には笑い声が毎日絶えないのである。


そして今日も・・・・


せっせと部室の後片付けをしながら、海堂はひとりで何やら鼻歌を歌っている。
ほあろ おあろな おもほひ〜〜や〜〜〜 こいを いたしましょぉ〜〜〜〜」


「おい・・・なんだ、あの変な呪文みたいなのは」
みんな物陰から、上機嫌の海堂を盗み見ている。
「あれは『おじゃる丸』のエンディングで電ボが歌っている歌です」
と、いつものように不二がしれっと解説した。
「おおーーー!!そうか!!電ボか!!」
「時季外れもいいとこですけどねえ・・・・」
「いいんだそんなこと。海堂が歌ってると何でも可愛いからな!!」


はあ〜〜・・・・変な部。


自分も充分変ってことに、まるっきり気付いてない不二であった。





                    オワリデス。





桃の誕生日に素敵作品をプレゼントしてくださった、紀利夕 ユキ様に捧げます。
本当につまらないもので申し訳ございません。
話題が古いのは、海堂だからってことでお見逃しくださると助かるなぁ・・・・(^ ^;)
そして桃は、海堂の語呂合わせのお陰で単語テストに合格し、それ以来、恥を捨てて
海堂とおんなじ覚え方をすることにしたのであります(笑)。

・・・・まったくうちのサイトの海堂はボケな子ですみません。
この駄文、受け取り拒否権の発動オッケーですから、どうぞご遠慮なく・・・・



          H16.9.29     まころんより日頃の感謝を込めて


 
まころん様 こんな可愛い小説を書いてくださって本当にありがとうございます!
喜んで受け取らせていただきます! 

薫が本当に天然で可愛いですよv 皆も幸せそうでいいなあv
英単語の覚え方が面白くていいです!自分もおぼえちゃった!


本当にありがとうございました!





 

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