カオルのアトリエ〜ザールブルグの錬金術士〜2
〜カオルの決意〜
「それでは先生はザールブルグに向かう途中でしたか」
「はい。あそこは最新技術を取り入れようとしてるし、城下町ですからね。
私の夢実現のためにはもってこいなんですよ」
はやり病で苦しんでいた俺を助けてくれた、このサダハル・イヌイという人は
俺たちにいろいろな話をしてくれた。錬金術という学問のこと、俺に使った薬もその術で自分で作ったこと、ザールブルグに錬金術のアカデミーを建てて、この技術をもっと広げたいという自分の夢のこと。
「アカデミーを建設するにはかなりのお金がかかりますから。もし、王室にこの技術が認められたら補助金もだしてもらえますし。何年かかるかわからないですけどね」
真剣にこの人の話を聞いていた俺は、この術を自分も学んでみたい、命の恩人のこの人に少しでも恩返ししたい・・そう思うようになっていた。
「あの・・先生は弟子とかは取らない主義なんですか?」
「いや・・そういうわけではないよ」
先生は俺のこの質問に不思議そうに答える。
「いきなりこんなこと言うのも失礼だと思うんすけど・・俺を弟子にしてください!
俺・・その錬金術っていうのを学んでみたいと思ってるんです!」
俺のこの言葉にみんなは呆然としていたが、先生が口を開く。
「カオル君。錬金術はかなり根気がいるよ。それに薬だけじゃなく、爆弾とかそういうのも時には作っていかなくてはいけない。その覚悟もできるかい?」
「どんなことでも我慢します!」
俺はそう言うと先生の目を見つめ続けた。
やがて先生は根負けしたらしくて、
「分かった。俺の手伝いをしてくれると助かるよ。よろしくね。」
といってくれた。こうして俺は、サダハル先生と共にザールブルグに向かうことになった。
あれから1年後、13歳になった俺は、旅の途中で出会った親を亡くして1人で生活していた、リョーマ・エチゼンという子供と共に、シグザール王国城下町ザールブルグに来ていた。
「あっ、サダハル先生どうでしたか?」
この国の女王と謁見をしていた先生が帰ってきたのを見て、さっそく声をかける。
「だめだった。錬金術という聞いたこともない学問に援助金は出せないと言われたよ。」
「そうっすか」
だめだったのか・・結構期待してたのに・・
そんな俺の考えを遮るように先生は続ける。
「しかし、年に1回ある『展覧会』で認められればその1年は、援助金を出してもらえるらしい。今年はもう終わってるから、来年だな。
認めてもらえるように3人で頑張ろう。」
「「分かりました」」
先生の言葉に2人して返事をすると、先生は、満足そうに笑った。
今日からザールブルグで工房を借りて、仕事を貰いながら、生活していくことになった俺たち。
どうなっていくのか、まったく見当もつかないが、サダハル先生もいるし、生意気だけど頼りになるリョーマもいる。
なんとかなるだろう。絶対ここにアカデミーを建ててみせる。そう決心した俺は自分たちの家に入っていった。
H16. 6.17
1話に比べると短い・・工房を借りて住むことになった3人。どんな生活が待っているのでしょう。(私にもわからん(笑))
これ・・もし楽しみにしてるという方がいましたら感想ください。UPが早くなるかもしれません。
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